老兵は死なず

それは先週の金曜日夜に起こった。
コンビニに買い物に行こうと愛車に乗り込み、イグニッションキーを回したがセルモーターがウンともスンとも言わない。
ありゃ、バッテリー上がりか....そういえば先週の日曜日にもブレーキランプが付きっぱなしになる異状が出てたな....などと思いながらその日の買い物は徒歩で行くことにし、翌日JAFを呼ぶことにした。
とはいえ心配性の私のこと、その日の夜は「もしかしたらこの車もう寿命かも」などと思い、この車が我が家に来てからの思い出が走馬灯のように蘇ってセンチメンタルになっていた。なんせ私はいろいろなものに情が移る癖があるので(冷蔵庫ですら捨てるのが可哀想になって必死で引き取り先を探したりしたもんだ)、もう12年も乗りつづけた愛車とくればその情の移りっぷりも半端ではなく、なんとかまた元気にエンジンがかかってほしい、とそればかりを祈っていた。
翌日JAFに来てもらうと「バッテリーが完全放電している」とのこと。バッテリーを交換してもらい無事エンジンがかかったのでほっと胸をなでおろした。
ところが翌日買い物に行こうとしてエンジンをかけようとするが、またもかからない。さすがに青くなってJAFを呼ぶがその日は暑かったせいか出動が多く、1時間近くかかるとのこと。
おろおろする私に妻が一言。「あなたはあの車に愛着があるからずっと乗りつづけたいと思っているかもしれないけど、あの車はもう相当な年寄りなんだから『わしもそろそろ引退させて欲しいのう』『お仲間のところに行かせて欲しいのう』なんて思っているかもしれないよ」
これはなかなか胸に響いた。たしかに昭和63年式の車だから、人間の年齢に直すと何歳なんだかわからないけど自家用でこれだけ古い車に乗っている人はほとんどいないだろう(趣味のクラシックカーは別として)。やはり引退させてやるのが愛情なのか....。
結局JAFが到着し、点検してもらったところ「ブレーキランプの付きっ放しによるバッテリーの放電」と判明し、JAFのおじさんが汗だくでブレーキスイッチ(?)を調整してくれてバッテリーを再交換し、何事もなかったかのように走り出した。
その後念のためにトヨタのネッツにもいって見てもらったが異状は見られないということで、現在もそのまま走りつづけている。
直ってくれたということは、車としてももう一働きしたいと思ってくれているんだろう。と勝手に思うことにした。ということでわが愛車よ、もうしばらくお世話になります。