遠く遠く

今頃の季節を歌った歌は数多くあるが、その中でも印象深いのがこの歌だ。たしか高校時代の後輩がカラオケで歌っていたのがこの歌との出会いだったと思う。
当時の自分は自宅から大学に通っていたとはいえ、田舎の公立高校から東京の大学に進んで昔の仲間とも少しずつ疎遠となり、それが何とも寂しいと思ってた頃だったので主人公の姿を自分と重ね合わせながらよく聴いていた。*1たぶん私の世代の人間でそういう気持ちだった人は少なくないんじゃないだろうか。
私は子供の頃からクイズが好きで、卒業アルバムの寄せ書きなんかにも「ウルトラクイズで優勝する」などという夢を書き記していた。だからいつの日かアメリカの大地を駆け回り、ニューヨークで歓喜する自分の姿をブラウン管越しに皆に見せることで、遠く遠く離れていても僕のことがわかるように、力いっぱい輝ける日を夢見て頑張っていたもんだ。
永遠に続くと思っていたウルトラクイズが姿を消し、自分の目標は「クイズ王になる」というものにちょっとした方向転換をしたけれども、その根底に流れる気持ちは変わらなかった。
それからまた時がたち、「クイズに強くなる」ことと「テレビに出る」ことが必ずしも結びつかない時代が来てしまっても、自分はクイズを続けていた。それはきっと「テレビに出る」こと以外のクイズの魅力に気づいたからなんだろう。でもこの歌を聴くと、純粋に「夢に向かって結果を出した自分の姿を皆に見てもらいたい」という思いでクイズに取り組んでいた頃の気持ちを思い出すのだ。
それほどに思い入れがある歌だからこそ、これを作り歌った青年がその後残した汚点には残念でならない。彼自身を責めるのではなく、このような歌詞を残した人間でさえあのようなことをしてしまうという、人間というものの弱さに涙が出る思いだ。だからといってこの歌の価値が下がるわけでもないし、この歌への思い入れが薄れるわけでもないと思っている。

*1:とはいえ同窓会の案内状に欠席に丸をつけたことはなかったけど。どっちかというと同窓会の案内状を出す側の立場だった。