カブトムシ

8月19日(水)
朝起きてみてみるとひっくり返って脚をもぞもぞ動かしている。とりあえず元に戻してやった。食事はそれなりに食べているようだ。
午前中仕事をしていると家で仕事をしていた妻から携帯にメール。曰く「みるたびにひっくり返っていて、その都度直してやっている」とのこと。取り急ぎ足場になる枯葉を入れてもらうように頼み、職住近接の利を活かして昼休みに様子を見に行ってみた。
やはりプラスチックの餌台は滑りやすいのか、と思い餌台を撤去して輪切りの朽木を入れ替える。餌ゼリーとバナナもだいぶ減っていたので取り出し、ゼリーだけ新しいのを入れてやる。作業の間も黒兵衛は私の手のひらから腕へと歩き回っているが、心なしか弱弱しい。しかしカゴに戻すとまたもぞもぞと動いている。昼休みは時間がないのでそれくらいに留めたが、帰ったら広いところに入れ替えてやることにしよう。
ということで仕事が終わった後またも百円ショップに行き、大き目の朽木や保水ゼリーを買い込んで帰宅する。妻からは「黒兵衛が動いていないよ」と言われたので慌てて部屋に行き、電気をつけると黒兵衛がびっくりしたように少し動いた。少なくともそう見えた。
そして、私が黒兵衛の動く姿を見たのはこれが最後だった。


夕食を終え、プーを寝付せたあと黒兵衛を見に行ったが、餌ゼリーは全く減っていない。そして入れ替え作業のために蓋を開けてみても全く動かない。茶太郎の最期ときは完全にひっくり返っており、一目見て事切れていることがわかる姿だったが、黒兵衛は今にも動き出しそうな堂々たる姿で鎮座している。しかし、この漆黒の重戦車が再び動き出すことはもうないということは何となくわかった。それでも奇跡を信じ、もう一晩だけ様子を見ることにした。


8月20日(木)
朝起きてまた虫カゴを見に行くが、やはり昨日と全く同じ姿のままだった....。
帰宅後にプーと2人で茶太郎と同じところに黒兵衛を埋葬してやった。短い間だったがありがとう。天国でいつまでも仲良くしてほしい(オス同士だから本来仲良くすることはないんだろうけど)。
家に帰ると主をなくした虫カゴが目に入った。黒兵衛が入っていた頃はあんなに狭く感じたのだが、いなくなってみるとこれでも妙に広く感じられた。


後で調べたところによるとカブトムシの成虫はお盆過ぎあたりから続々と死んでいくらしい。だとしたら、茶太郎はともかく黒兵衛は天寿を全うしたといえるのだろうか。それとも私(とプー)がもう少し上手に世話をしてやれば、もう少し長く生きられたのだろうか。前者であることを祈りたい。黒兵衛と茶太郎が少しでも幸せであったならばよいのだが。
けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。