うちの王子ラスベガスに行く その12

この連載の前の記事を書いたのは2ヶ月以上前。その冒頭で「次にラスベガスに行くまでには書き上げたい」などと書いたが、結局それはかなわなかった....。とにもかくにも昨年9月の話の続き。
再び第4ターミナルまで歩き、搭乗口へ向かう。さっき来たときはすいていそうだったので油断していたが、ここも長蛇の列。アメリカの飛行機の荷物とボディチェックは時間がかかると聞いていたが、やはり....。とりあえず列に並んでいる間に手持ちのペットボトルの水を大急ぎで飲み干す。しかし機内食にくっついてきたグレープジュースには手が回らず断念。ああ、勿体無い....。
列に並んでしばらくすると、どうやらもう一つゲートを空ける手配をしているらしく、我々の少し後ろのあたりから別の列に誘導されていった。おそらくあの人たちは我々よりも先にゲートを通過したのだろうが、このへんは「先に並んでいた人を優先して先に通す」よりも「いかに全体を速く捌くか」を優先するという考え方なんだろう。いい悪いはともかくとしてこのへんがアメリカ流の合理主義なんだろうか。
ようやく自分たちの番が来た。まず妻とプーが無事通過し、続いて私。ポケットから財布だの携帯だのを全部取り出し、靴を脱ぎ、ベルトを外してゲートへ。勝手がわからずゲートで一度立ち止まったら*1「立ち止まらずに通り過ぎろ」とのこと。いったん戻って今度は普通に通り抜けようとしたが、それでもゲートで引っかかった。どうやら首からパスポートケースを提げていたのがまずかったらしい。金属使ってないと思うんだけどなぁ。パスポートケースを外して無事ゲートを通過し、大急ぎでベルトを締めて靴を履いて荷物を回収して搭乗口に向かう。既に搭乗が始まっていたのであまり周囲を見物する間もなく飛行機へ。中央に通路が1本、右に2席左に3席の小さな飛行機だ。指定された席が左の窓側1席、右の窓側2席だったので3人並ぶのは諦める。右の窓側席にとりあえずプーを座らせていると、隣の席(中央席)に東洋系の人が座ろうとしていたのでその方と交渉することにする。こういうことは妻のほうが圧倒的に得意なのでお任せすることにしたが、東洋系に見えてもやはり欧米人らしい。なんとか快諾をいただき、窓側にプー、その隣に私、そしてプーの後ろの窓側の席に妻となんとか固まって座ることに成功。
予想していたことだが座席にはエンタテイメント機材は何も無い。機内誌らしきものも無い。脱出案内なんかも当然英語のみ。まぁ、コードシェアすらしていない米国国内便だから当然といえば当然か。プーが退屈しないように持ってきた子供向けの本を取り出しておく。フライトは1時間強だからまぁ何とかなるだろう。
間もなく定刻になり無事離陸。ロサンゼルスの町が少しずつ小さくなるが、やはり巨大都市だけあってしばらくは街の上を飛行している。フライトが短いために高度もあまり上がらず、プーの席越しでもそれなりに地上が見える。プーの相手をしつつなのであまりゆっくり窓の外を見るわけにもいかないが、気がつけば街は終わり、結構な高さがあると思われる山脈を越えると砂漠*2が広がっている。
この砂漠の眺めが何ともいえず、飽きない。我々が「砂漠」と聞いてイメージする一面の砂ではなく、ところどころちょっとした山塊があり、そこにはどれだけ昔かわからないがいつか水が流れてできたであろうと思われる筋が幾筋も刻まれている。そしてその山塊の麓は一面砂で覆われている。おそらくこの砂を全て取り払ってしまえば、その下からは更に複雑な地形が姿を現すのだろう。ちょうど海が海底の地形を全て覆ってしまい、それより高い陸地だけを我々が認識できるようなものだろうか。そう思うと(この地域の話ではないが)かつて砂漠を渡った隊商たちが駱駝を船に喩えたのも言いえて妙な話だ。しかし現実の海と異なるのは、その中を貫いて伸びる線があることだ。砂漠を横断する道路なんだろう。普通の道はまず獣が通り、やがて人が通ってやがて道になるのが常なんだろうが、この道は最初から車が通るために作られた道路なんだろうか。
....機内で配られたオレンジジュースを飲みながらそんなことを考えているうちに*3、気がつけば少しずつ飛行機は高度を下げている。窓の外には今までよりも大きい山塊が姿を現し、そしてその一部が極めて目立つ色彩を放っているのが目に留まった。あるところは赤く、あるところは緑の岩肌を見せている。何だあれは? と思っていると飛行機は大きく旋回し、やがて街が見え始めた。ガイドブックで何度も読んだメガホテルの姿こそ見つけられなかったが、これがラスベガスの街に違いない。ようやく見えてきた....。
街はだんだん大きくなる。ひときわ高い建造物はストラトスフィアだろうか。しかし中心部に少し高層建築物が見える以外は、ほとんどが低い建物で埋め尽くされている。その中心部の高層建築物が少しずつ輪郭が鮮やかになり、金色やら緑やらの華やかな姿が見て取れるようになると間もなく飛行機はマッキャラン国際空港に着陸した。着陸直前には宿泊予定の「ルクソール」の漆黒の四角錘も見え、興奮が高まる。とうとうやってきた!

*1:ウルトラクイズのブーブーゲートみたいなイメージでいたので....。

*2:モハーベ砂漠の一部なのか?

*3:この間プーはおとなしくしていた。